KYOTO UNIVERSITYGRADUATE SCHOOL OF LETTERSFACULTY OF LETTERS 202401020306研究科長あいさつ年譜学部・大学院の教育文学研究科・文学部の研究教育組織京都大学の文学部と文学研究科は、実は、世界の大学史ひいては文化史の中でユニークな位置を占めています。「大学とは最先端の研究を行い、新たな知を生み出す場。」今ではあたり前となった、このような「研究のアリーナ」としての大学像は、19世紀のドイツで生まれたとされ、提唱者の一人の名前を冠して今日では「フンボルト理念」と呼ばれています。ドイツ国外でこの「フンボルト理念」にもとづいて初めて設立されたのが、現在でも医学系では世界トップクラスの研究機関とされているアメリカのジョンズ・ホプキンズ大学です。では文系では、どこがドイツ国外初の「フンボルト大学」なのでしょうか。これは中々ムヅカシイ問題ですが、少なくともアジアで初の事例の一つが京都大学の前身である京都帝国大学であることは確かなようです。京大の文系の学部としてはまずは今日の法学部が、ついで今日の文学部が設立されましたが、これらの学部こそアジアでも最初期の「文系フンボルト学部」だったのです。フンボルト大学では、学生は、教師の教えを一方的に叩き込まれる受身の存在ではなく、駆け出しではあるものの、自前で研究を切り拓く研究者として扱われます。例えば、当時の日本の多くの大学では、学生は図書館で本を閲覧することはできても借り出すことはできませんでした。しかし、学生をジュニアな研究者として遇した京大文学部では、設立当初から学生への図書貸し出しが認められていました。またフンボルト大学の特徴は「演習(ゼミナール)」という授業形態にも表れています。学問の現況を概観する「講義」に加え、教員は「研究」授業で自らの現在進行中の研究内容を開陳することで、研究の方法や、研究現場での苦労や喜びを、身を以て学生に示します。そして教師の後ろ姿から研究手法を見よう見まねで学んだ学生は、早速、自分でもそれを実践し、「演習」の場でその成果を披露することになります。今はどこの大学にもある「ゼミ」は、そもそもは学生が研究者として自立するための「ゆりかご」の役割を担っていたのです。「フンボルト学部」としての京大文学部は、設立当初から、このような「演習」と、そこでの研究発表をもとに執筆される卒業論文をことのほか重視してきました。同じことは文学研究科についても言えます。大学院演習における研究発表と、それをベースとした修士論文や博士論文の執筆こそが、長らく大学院生の生活の最優先事とされてきたのです。学生が最初から研究者として扱われるフンボルト大学は、やる気に溢れた学生にとってはやりがいのある環境とも言えますが、同時に「厳しい道場」でもありました。実際、京大文学部や文学研究科のあちこちの教室には、演習や卒論試問のタフさが尾ひれはひれ付きの伝説として伝えられていました。ちなみにアジアにおいて京大に次ぐ「文系フンボルト学部」を擁した大学の一つとして中国の北京大学を挙げることができます。北京大学では、ドイツへの留学経験も持つ蔡元培という学長が大鉈をふるい、工学部を「応用学」として大学から追い出してまで大学の「フンボルト化」を推し進めました。0708091011東洋文化学系国語学国文学専修中国語学中国文学専修中国哲学史専修インド古典学専修仏教学専修12131415161718西洋古典学専修スラブ語学スラブ文学専修ドイツ語学ドイツ文学専修英語学英文学専修アメリカ文学専修フランス語学フランス文学専修イタリア語学イタリア文学専修19202122232425哲学専修西洋哲学史専修日本哲学史専修倫理学専修宗教学専修キリスト教学専修美学美術史学専修西洋文化学系哲学基礎文化学系CONTENTS大学院文学研究科・文学部
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